ごあいさつ
多文化共生をめざす川崎歴史ミュージアム設立委員会 代表 宋 富子

末子が入った桜本保育園で出会った李仁夏先生の、「在日韓国朝鮮人の皆さんは、自分を愛する意味で通称名の日本名でなく本名、民族名を使用してもらいます」という一言に、驚きました。私は民族名の呼方も知らず、小学校に入学するや貧しさとチョーセン人ということで虐められ、中学校を卒業しても新聞も読めない無知でした。李先生の導きで初めて朝鮮半島と日本の古代から近代の歴史を学び、価値観がひっくり返され覚醒しました。過去の事実の歴史を学ぶ場が必要だ、ぜひ川崎に創りたい。そんな熱い思いも、日常に追われて、心に鍵をかけてしまいました。
あれから50年あまり。東京でのボランティア活動に区切りをつけホッとしたとき、歴史館構想を思い出しました。周りの皆さんに聞いてもらい、2023年4月に設立の準備会を開いて以来、毎月第4土曜日を中心に実行委員会(24年7月から名称が変わり運営委員会)を開催しています。
これまで川崎では、1970年の日立就職差別裁判闘争から、近年のヘイトスピーチ問題では川崎市差別のないまちづくり条例の制定など、多くの取組が協働で展開し、実を結びました。私たちが数々の不条理に声をあげ闘って勝ち取ってきた権利の上に今日の生活が営まれているということ、それは「共に生きる」という理念があったからこそです。
今立っている地平を記録し後代に継承していきたいと考えて私たちは出発しました。地域の子どもたちが楽しく学ぶ場、小中高校の校外学習の場ば、さまざまなルーツをもつ人たちが気楽に集まり語り合う場ば、そんなステキなミュージアムにしたいです。